こんにちは。
筆者は星景写真と呼ばれる、星をメインとした風景写真を撮るのが好きです。というのも、とある写真家の方の作品に出会い、彼に憧れ星景写真に目覚めて2022年冬から撮り続けてかれこれ3年が経過しました。
これから星空を撮ってみたいという方にも、今までも星空を撮ってきたけど、より魅力的に星空を撮れるようになりたいという方にも読んでいただきたい、筆者のハウツーをご紹介させていただきます。
必須な機材
まずは、「これだけあれば最低限星空を撮れる!」という機材をご紹介します。
1. カメラ
星景写真撮影はまずカメラがないと始まりません。どんなカメラでも星空を撮ることができますが、1画素あたりの光を取り入れる面積が大きいという意味では、できればフルサイズがおすすめです。画素数は2000~3000万画素程度がバランスが取れていて使いやすいという印象を受けました。
Nikonで言えばZ6III、SONYでいえばα7IIIがオススメです。
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a.Nikon Z6III
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b.SONY α7III
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もし明るいレンズをお持ちであれば、4000万画素以上の高画素機を使ってみるのも手ではないでしょうか。筆者はZ7II、Z8、Z9やα7RIVといった4000万画素以上の機材を星景写真に使ったことがありますが、どのカメラも非常に優秀だと感じました。
2. レンズ
これもないと始まりません。どのような写真を撮るかにもよりますが、超広角~広角レンズが星景写真には使いやすいです。焦点距離的には概ね約16~35mm程度(その理由は「その3 -実践編-」にて説明いたします)が撮りやすいのではないでしょうか。F値は明るければ明るいほどいいです。もちろん明るいレンズを用意できれば一番良いですが、F4程度のレンズでも問題はありません。
筆者が使ったことのある、おすすめのレンズを3つ紹介します。
a. Nikon NIKKOR Z 20mm f/1.8 S

(Nikon Zf + Z 20mm f/1.8S SS13秒 F1.8 ISO3200 Mモード Lightroom Classicで現像済み)

筆者が一番おすすめなのが、この20mm単焦点です。私物として愛用しているレンズの一つです。
周辺まで点像が綺麗に写る(=彗星の尾のように滲まないという性能も星景写真用レンズでは重視されます)というレンズ自体の性能もさることながら、レンズが軽く取り回しやすいことに加え、市場に出回る多くのレンズが採用している77mm径のフィルターが使いまわせるのがメインの魅力です。星空写真ではソフトフィルターや光害カットフィルター(後述します)を使われたいという方も多くいらっしゃるかと思いますので、そういったフィルターを(比較的)安価な77mmで使えるのは魅力ではないでしょうか。20mmという焦点距離も、広すぎず狭すぎず非常に使いやすいです。
b. SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art
(SONY α7RIV + SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art SS15秒 F1.4 ISO1600 WB4050K Mモード)

ニコンZマウント使いの筆者がSONY・SIGMA・LUMIXが羨ましくなる瞬間が訪れるのが、このレンズを使った時です。
F1.4でこれが撮れるのか、と驚嘆した覚えがあります。
シャッタースピードを稼ぐことができる画角の広さと明るさと解像感を両立していました。このレンズに出会ったのはもう1年も前のことですが、未だにあの時の衝撃は忘れられません。また、レンズヒーターが付けやすい、マニュアルフォーカスをロックできるといった星景撮影に適した仕様になっているのも特徴です。しかしながらこのレンズ、保護フィルターをつけられないので前玉が剥き出し(「出目金」)になってしまうため、使用時・収納時に若干気を使う必要があります。前側にフィルターをつけられないというデメリットを抜きにしても、試す価値はあります。
c. Nikon AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

(Nikon D4S + AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED SS20秒 F2.8 ISO3200 WB3950K Mモード)

2007年の登場と、上2つに比べると若干の古さは否めませんが、「不朽の名作」と言っても過言ではないレンズです。絞り開放であっても周辺の収差がほとんど気にならないことや、解像度が高いのが大きな魅力です。強いていうならば、SIGMAの14mm同様に前玉が剥き出しの「出目金」なので、若干使用時に注意が必要です。
3. 三脚
星景写真に絶対に欠かせないのは三脚です。十数秒~数十秒の長時間露光が必要となってくるため、基本的に手持ちでそこまでの長時間撮影をすることは不可能に近いです。しかしながら、三脚も選び方がわからない…という方が多いのではないでしょうか。そこでどんなカメラでも使える万能三脚を一つご紹介させていただきます。
Leofoto LS-284CEX+LH-36LR

この三脚の魅力はカーボン製なので軽いことに加え、レベリングベースが付いているので水平が取りやすいことに加え、耐荷重が10kgなので大抵の機材を載せても安定するということです。また、冬場は三脚を触る手が冷たくなりますが、カーボン三脚はアルミ三脚に比べてそこまで冷たくないのが魅力です。雲台もアルカスイス互換のため、前述したSIGMAの14mmをはじめとした、三脚座がついた大型広角レンズはプレートを介さずとも直接装着ができます。
4. 予備用バッテリー
星景写真は長時間シャッターを開けることが多い都合上、必然的にバッテリーの減りも早くなります。よって、いつバッテリーが無くなってもおかしくない状況です。バッテリーのパフォーマンスが落ちる夏以外の寒い季節であれば尚更です。バッテリーグリップのオプションがあるカメラであれば、バッテリー交換の手間が減るのでそちらもおすすめです。カメラボディがUSB給電対応のカメラであれば(ご紹介した2機種はどちらも対応しています)、ケーブルを介してモバイルバッテリーを繋ぐのも一つの選択肢ではないでしょうか。1つと言わず、2つくらいあれば心理的に安心です。
あると便利な機材
1. フィルター類
普通にフィルターを付けない「素」の状態でも十分魅力的に写真を撮ることはできますが、フィルターを付けた方がより魅力的に撮影することができます。
例えばこの一枚。
(SONY α7RIV + SIGMA 24mm F1.4 DG DN | Art SS8秒 F1.4 ISO3200 WB4050K Mモード ソフトフィルター・光害カットフィルター装着)
ソフトフィルターと光害カットフィルターを同時に装着しています。天の川とさそり座が際立って見えるのがお分かりいただけるかと思います。その一方で、フィルターを付けすぎるのは画質悪化を招きますので、強い光源(街灯・月明かりなど)がある場所ではフィルターをあまり付けないのが賢明ではないでしょうか。
当社でも最近星景撮影に適したフィルターの取り扱いを始めました。購入に二の足を踏まれている方はまずレンタルからお試しいただく、というのも選択肢としてはあるのではないでしょうか。
2. リモートレリーズ
星という点像を映す星景写真にとって、ブレは大敵です。場合によってはシャッターボタンを押すという動き自体がブレにつながってしまうこともあります。

(SONY α7SIII + FE 35mm F1.4 GM SS4秒 F1.4 ISO12800 WB4750K Mモード ソフトフィルター・光害カットフィルター装着)
例えばこの写真。シャッターボタンを押したことによって微妙にブレが生じてしまっています。そんな場合にオススメできるのがリモートレリーズです。有線でカメラに接続し、リモコンとしてシャッターボタンの動きをコントロールできるのが大きな特徴です。カメラによって端子の形状は異なります(筆者が愛用しているNikon Zfのようにそもそも接続できないカメラもあります)ので、借りられる前にご確認ください。
SnapBridgeなどといった無線で接続するアプリで代用できないこともないですが、無線接続はバッテリーの消費を早めるのであまりおすすめできません。最悪リモートレリーズが繋げられないカメラという場合、セルフタイマーでも代用可能です。
3. レンズヒーター+モバイルバッテリー
冬場はあまり気になりませんが、春から秋にかけて露点が高くなると、レンズの前玉が曇ってしまい、せっかくの写真が台無しになった…という経験が少なくとも筆者はあります。露点以上にレンズの温度を保つことで、レンズの曇りを防止してくれます。タイムラプス撮影などの長時間撮影に有用です。

筆者個人所有のレンズヒーターと、当社のSIGMAレンズです。「カイロで代用できないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、結論から言うと代用は不可能です。カイロ二つをテープでレンズに巻きつけ、一度試したことがありますが、3月の山梨の低温の前には歯が立ちませんでした。
4. ヘッドランプ
ヘッドランプも、持ってて損はないかと思います。「スマホの懐中電灯で代用できないの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、スマホを持っていると片手が塞がってしまいます。そんな状況で、ヘッドランプで手元を明るく照らしつつ両手がフリーになるというのは大きな価値があります。ただ、他の撮影者の方がいらっしゃるところでは、映り込みやトラブル防止のため、無闇矢鱈にライトを照らさないことをオススメします。
5. 防寒具・服装
星空を綺麗に撮ることができる地点の多くは標高が高いですので、必然的に都心部に比べると気温が低いです。筆者が訪問した群馬県嬬恋村では3月でも-10°Cと、かなりの寒さでした。ダウンジャケット、あったかいインナー、ネックウォーマー、帽子、手袋、カイロは必需品ではないでしょうか。もちろん、場所によって差異はありますので、天気予報をよく確かめてから訪問されるのが一番いいかと思います。
6. パーマセルテープ
上の5つのアイテムと比べると優先度は低いですが、何かと役立つのがパーマセルテープです。プロの間でよく使われています。主に、反射防止や防犯を目的にカメラ前面の刻印を隠したり、アクセサリーを固定したりといった用途で使われます。
星景写真で使える用途としては、フォーカスリングの固定やレンズヒーターのモバイルバッテリーの固定に有用です。
また、筆者自身の経験として役立ったのは、撮影地でナットロック式の三脚内部の部品が故障した際にパイプとナットロックの上から巻きつけ、なんとか固定して使用した経験があります(写真歴10年の筆者個人が個人の責任の元で行った経験です。真似されて機材に損害が出ても筆者と当社は責任を負えません)。
また、手袋に穴が空いた際にもパーマセルテープで塞いだことがあります。
1本2000円台とお高めですが、持っておいて損はないでしょう。
まとめ
今回は、初めて星空を撮る方や星空撮影をステップアップさせたい方がどのような機材を揃えたらいいかを紹介させていただきました。多くの商品はマップレンタルでも取り揃えていますので、まず一回借りてみて試してみる、というスタイルもありなのではないでしょうか?
次回はロケーション選び編と題しまして、撮影する時期やロケーションの選び方を紹介させていただきます。次回もお楽しみに!
オススメの機材
先ほどオススメした機材から、マップレンタルで取り扱っている機材を紹介いたします。
商品名のリンクから各商品のページに移動できますので、ぜひご利用ください。
ボディ
- 【Nikon Z6III】- 2024年に登場した最新鋭のミドルクラスミラーレスカメラ。裏面積層型センサーを採用しており、常用でISO64000まで対応しているのが大きな特徴。
- 【SONY α7III】- 2018年に登場したフルサイズミラーレスの名機。これより後に登場したミラーレスにも劣らない究極のバランス型選手。
レンズ
- 【Nikon NIKKOR Z 20mm f/1.8 S】- Nikon屈指の広角単焦点レンズ。絞り開放から使える点像再現性と高い解像度を実現。
- 【SIGMA 14mm F1.4 DG DN | Art(ソニーEマウント)】- 14mmという広さでF1.4の明るさを実現した驚異のレンズ。
- 【Nikon AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED】- 2007年と登場は古いものの、現在も製造中の不朽の名機。Fマウントユーザーならこれ一択。
三脚
リモートレリーズ
予備用バッテリー
フィルター